2022.01.19 終焉の歴史を紐解く
「棺桶の荒縄が妊婦のお守りに? 受け継がれた風習の謎」

不思議な言い伝えとその真相
こんにちは、遺体感染管理士のエンゼル佐藤です。今回は、私自身が経験した不思議な安産のお守りにまつわるエピソードをお話しします。
ある日、父が持ってきた「安産のお守り」
私が第一子を妊娠したときのこと。ある日、父がどこからか麻縄の束を持ってきて言いました。
「これは安産のお守りだから、腹に巻いておけ」
突然のことで驚きましたが、それ以上に気になったのは、その縄の正体です。
「これ、何の縄なの?」と尋ねると、父は平然とこう答えました。
「土葬のときに棺桶の淵に結んで使った縄だ」
棺桶の荒縄が安産のお守り!?
これにはさすがに困惑しました。確かにお守りとしての由来があるのかもしれませんが、土葬の縄を妊婦に渡すなんて、今の時代ではありえない話です。もし、これをお嫁さんに渡していたら、「嫌がらせか!」と大問題になりかねません。
もちろん、私はその縄を父に内緒でこっそり処分しました。ですが、その後、まさかこの縄に本当に意味があったと知ることになるとは……。
「縁の綱」とは?
私の実家は真言宗智山派。嫁ぎ先も同じ宗派だったため、親族の葬儀の際にお坊さんと話す機会がありました。そのとき、ふとこの縄の話を思い出し、お坊さんに聞いてみたのです。
すると、意外な答えが返ってきました。
「随分昔はそう言われていた時代もありましたね」
やはり、何らかの由来があるようです。ただし、そのお坊さんも明確な理由は語りませんでした。
「あの世とこの世を結ぶからでは……?」
正直、これでは納得がいきませんでした。そこで、さらに十数年が経ち、別の真言宗のお坊さんと話す機会があった際に、改めてこの謎を尋ねてみました。
棺桶の縄の本当の意味
このお坊さんは非常に博識な方で、驚くべき真相を教えてくれました。
もともと「縁の綱」とは、土葬の際に使われる晒布(さらしぬの)だったのです。
昔は、墓地を「あの世」とし、そこに棺桶を運ぶのは女性の役割でした。その理由は、女性は出産の際に「あの世」と「この世」を行き来する強い生命力を持っていると信じられていたから。
棺桶は荷車に載せられ、女性たちが晒布で作られた紐を引いて墓地へ運んだそうです。そして、使用済みの晒布は菩提寺で清められ、妊婦が腹帯として使うことで「無事に出産できる」と信じられていたのです。
迷信か、それとも本当に効果があったのか?
この話を聞いたとき、私の最初の拒否反応は少し和らぎました。確かに、こうした信仰には意味があり、昔の人々にとっては大切な風習だったのかもしれません。
ただし、現代の感覚では「棺桶に使った縄」と聞いただけで嫌悪感を抱く人がほとんどでしょう。実際、私自身も父からその縄を渡されたときは「即処分!」としか思いませんでした。
昔は、腹帯も「白い晒」をぎっちぎちに巻いていたものですが、今では緩やかなコルセットが主流。「きつく締めるのは胎児虐待」とまで言われる時代です。
まとめ:伝統と現代の価値観の違い
安産を願う気持ちは昔も今も変わりません。しかし、時代とともに信仰や習慣も変化していくものです。
もし、あなたが「縁の綱」の話を聞いたことがあるなら、ぜひご自身の家族や地域の風習を調べてみてください。意外な由来が隠れているかもしれません。
そして、何よりも大切なのは「お守りは、信じる心があってこそ意味を持つ」ということ。どんなに強力な縁起物でも、気持ちが伴わなければ逆効果になりかねません。
さて、あなたならこの縄を受け取りますか?