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遺体修復士の備忘録

2025.07.22 エンゼルケアにおける事例

ご遺体の口が閉じないときの原因と対処法|現場から伝えたい本当に役立つケアと注意点

こんにちは、遺体修復士のエンゼル佐藤です。

お見送りの際、ご遺体の口元が開いたままになって「どうしたら良いか分からない」とご相談を受けることがよくあります。
大切なご家族を安らかなお顔で送り出したい――そのお気持ち、とてもよく分かります。

ここでは、口が閉じない主な原因と、ご自宅でもできるケアのコツ、現場目線で伝えたい注意点を、できるだけ分かりやすくまとめました。


口が閉じない主な原因

  • 頭の位置が低いこと
    末期の病院ケアや葬儀社で用意される枕は「呼吸を楽にする」「見た目を整える」目的で低いものが多く、これが原因であごが下がり、口が開いてしまいます。
    実は、生きている人でも低い枕だと口が開きやすく、いびきをかきやすいのと同じ現象です。
  • 筋肉の弛緩
    死後は筋肉の力が抜けるため、口が自然と開きやすくなります。
  • 歯や入れ歯の状態
    歯が抜けている、長期間入れ歯を外していたなども、口が閉じにくくなる原因です。
  • 死後硬直の進行
    時間が経つと口元が硬直し、閉じにくくなります。

ご自宅でできるケアと対処法

1. まずは「頭の高さ」を調整

  • 畳んだタオルやバスタオルを頭の下に敷いて高さを出す
    これだけで多くのケースは自然と口が閉じます。
  • タオルならそのまま火葬しても問題ありません。

2. それでも閉じない場合の補助テクニック

  • 顎の下に丸めたハンドタオルをスペーサーとして入れる
    顎を下からやさしく支えることで、さらに口が閉じやすくなります。
  • これも火葬時にそのままにして大丈夫です。
  • 見た目も自然で、皮膚への負担もありません。

絶対に避けたいNG例

  • スウェーデン製「チンカラー」など、ゴムバンドで顎を強く押さえるタイプ
    白いサテン生地で一見きれいですが、効果はほぼなく、ゴムの跡がつき皮膚が変色してしまいます。
  • 葬儀社でよく使われるプラスチック製スペーサー
    見た目が痛々しく、跡が残る、効果もいまひとつです。
  • 無理に接着剤やテープで口を固定すること
    これは絶対に避けてください。
    実際に納棺師や現場スタッフが行ってしまうことがありますが、接着剤で唇や口を閉じるのは「ご本人の尊厳を大きく損なう行為」です。
    皮膚を傷つけたり、火葬の際に支障をきたす場合もあり、故人とご遺族の想いに寄り添った対応とは言えません。
  • 力任せに顎を押し上げる/無理に閉じようとすること
    皮膚や骨、筋肉を損傷する危険があります。

口がどうしても閉じない場合でも、接着剤などの「強引な方法」は絶対に使わず、まずは頭や顎の下にタオルで高さを調整することが、故人の尊厳を守り、安らかな表情を残す最大のコツです。


死後硬直や入れ歯の扱いについての注意点

  • 死後硬直が進んでいる場合
    無理に口を閉じようとすると、皮膚や筋肉、骨を傷つけてしまう可能性があります。
    この場合は、専門家に相談しましょう。
  • 長期間外していた入れ歯の装着
    死後、口腔内や顎も硬直してきます。
    無理に入れ歯を装着しようとせず、どうするか迷ったら専門家にご相談ください。

困ったときは専門家に相談を

「どうしても口が閉じない」「どこまで手を加えてよいか分からない」など、不安や疑問があれば、
ご自身で無理に対応せず、葬儀社や遺体修復士など専門家に遠慮なくご相談ください。