2025.07.22 グリーフ関連のコラム
遺体の目が閉じない原因と正しい閉じ方|葬儀前にできるやさしいケア

こんにちは。遺体修復士の「エンゼル佐藤」です。
「まるで眠っているような顔で送りたい」
それは、多くのご遺族が願う、最後のやさしさです。
しかし実際には、「目が閉じない」「まぶたが戻ってしまう」と戸惑うご家族が少なくありません。葬儀社や納棺師の方々からも、このことで困っているという声を日々いただいています。
今回は、医学的な視点から見た“遺体の目が閉じない原因”と、穏やかな表情に導くための正しいケア方法について、専門家の立場から解説いたします。
なぜ遺体の目が閉じないのか?主な原因とその対処法
原因①:目の乾燥によるまぶたのひっかかり
死亡後はまばたきが止まり、眼球の表面が急速に乾燥します。
乾いた表面にまぶたが引っかかってしまい、自然に閉じない状態になることがあります。
✅ ご遺族でもできる対処法:
- 市販の目薬(ドライアイ用・白内障用など)を使用し、目を潤す
- 人工涙液や生理食塩水でも代用可能
- 潤したあと、そっとまぶたを指先で下ろしてみてください
🌿ポイント:目薬は多めに使っても問題ありません。やさしく行いましょう。
原因②:湿りすぎてまぶたが滑ってしまう
逆に、目の周囲が湿りすぎると、まぶたが滑ってうまく止まらないことがあります。
湯灌や冷却処置の直後などに見られるケースです。
✅ ご遺族でもできる対処法:
- 清潔な綿棒やガーゼで、まぶたや目の周囲を軽く拭う
- 過剰な水分を取り除くことで、適度な摩擦が戻り、まぶたが留まりやすくなります
🔧 それでも閉じない場合はどうするか?
以下のようなケースでは、専門的な処置が必要です:
- 眼球が奥に沈んでしまっている(痩せすぎ・眼球陥没)
- まぶたの皮膚が薄すぎて足りない
- 死後硬直が進んで筋肉が固まっている
🧑⚕️ 専門的な対応例:
- 脱脂綿などを目の裏側に挿入して眼球を支える
- 皮膚のひきつれをほぐす
- 死後硬直を一時的に緩和するテクニック
※これらは知識と経験のある遺体修復士・エンバーマー等が行うべき処置です。
❓ 葬儀社に相談すれば対応してもらえるの?
多くの方が「葬儀のことは葬儀社に任せておけば安心」と考えるかもしれませんが、少し誤解があります。
🏷 一級葬祭ディレクターとは?
「一級葬祭ディレクター」は、式典の進行や運営に関する資格であり、遺体処置や医学的衛生に関する教育は含まれていません。
つまり、葬儀社がこの資格を持っていたとしても、目が閉じない・口が閉じないといった身体の処置に関する専門性は保証されていないのです。
⚠️ 接着剤で目を閉じるのは正しいのか?
一部の納棺師講座では、「目が閉じなければ接着剤で固定せよ」と指導することがあります。
しかし現場では以下のようなトラブルが頻発しています:
❌ 接着剤使用のリスク:
- 片目だけ半開きになる
- 皮膚の収縮で左右非対称になる
- やり直しが効かない
- 時間経過で目元に不自然なツッパリ感が出る
- 遺族が“気づいてしまい”、深いショックを受ける
💬「まさかうちのおばあちゃんの目が、接着剤で閉じられていたなんて…」
という声も、実際に寄せられています。
倫理的にも、人道的にも、できる限り接着剤は“最終手段”とすべきです。
✅ まとめ|後悔しないためにできること
- 遺体の目が閉じない主な原因は「乾燥」または「湿りすぎ」
- 目薬や清拭などで、やさしく対処するだけで改善できる場合も多い
- 無理な処置や接着剤の使用は、かえって不自然さやクレームの原因に
- 専門的なケアが必要な場合は、信頼できる遺体修復士や専門家に相談を
▶ 関連記事おすすめ:
- ご遺体の口が閉じないときの対処法と注意点