2025.04.11 終焉の場での豆知識
【シリーズ】変わりゆく“おくりかた”の現場から – 現場経験者が語る、火葬と葬送のリアルな記録 –

第2回:副葬品のタブーと真実
– ビーズ・スパンコール・写真…入れてはいけないものの理由とは –
こんにちは、遺体修復士のエンゼル佐藤です。
今回は「お棺に入れてはいけないもの」について、現場の視点から詳しくお話ししたいと思います。 大切な人との最期のお別れ。思い出の品や、好きだった服、手紙や写真……本当はたくさん入れてあげたい。でも、火葬という現実の中では“入れてはいけないもの”がいくつも存在します。
■ 絶対NG!ガラス素材のビーズとスパンコール
代表的なNG副葬品の一つが、ビーズやスパンコールなどのガラス素材です。 たとえば、
- ダンスドレスや舞台衣装
- ビジュー付きのブランドドレス
- 手縫いの刺繍カーディガンや帽子 などは、華やかで美しい一方で、ガラスやプラスチック系の装飾が使われていることが多く、火葬では燃え残ってしまいます。
- ガラス製の眼鏡のレンズ。
これらは火葬中に完全に燃えず、炉内で溶けてお骨に付着することがあり、拾骨時に異物として問題になるケースも。 実際に眼鏡のガラス製レンズなどは溶けてお骨に付いたり、台座に付着する事例があります。
■ 金属製品はOK?実は判断が分かれるアイテム
「金属は燃え残るからダメ?」と思われがちですが、
- ボタンやファスナー
- 革ジャンのビス止め などの小さな金属は、焼却後に除去できるため許可されることもあります。
ただし、
- ペースメーカーは火葬前に事前に申請して貰っています。
- 電池や電装部品のついた医療機器が体内にある場合も、事前申告が必要になります。
■ 写真の扱いは宗教的な側面も
「生きている人の写真は入れてはいけない」 これは、火葬場ではなくお坊さんから言われることが多い副葬品タブーです。 理由は、「故人と一緒に写真を入れると、“アチラ”に引っ張られる」という信仰的な考え方から。
科学的な根拠があるわけではありませんが、仏教的なタブーや地域のしきたりとして根強く残っている文化でもあります。
ちなみに我が家では、舅の棺にホステスさんとのツーショット写真をこっそり入れてしまいました(笑)。 収骨の際にお花の色写りでピンクに染まったお骨を見て「じいさん、写真のせいで骨がエロいわ!」と笑い話になったのも、今では良い思い出です。
■ お花の色にも注意が必要
これは私自身の体験談ですが、舅の葬儀の際に祭壇のピンクの花をたくさん入れた結果、お骨がピンク色に染まってしまったことがありました。
染色された花は高温で色素が揮発し、お骨に色移りすることがあるのです。 見た目を気にしないなら問題ありませんが、気になる方は白い花を中心にするのが無難です。
■ 六文銭と「ずた袋」…現代に残る宗教文化
宗派によっては、故人に白装束と一緒に“ずた袋”を持たせることがあります。 この袋にはかつて「三途の川の渡し賃」として六文銭を入れる習わしがありました。
ただし、現代では貨幣や紙幣を燃やすことは法律で禁止されています。 罰則の対象となる可能性もあるため、実際に金属の硬貨や紙幣を入れることは避け、印刷された模造六文銭や紙製の供養品を使うようにしてください。
たまに遺族の方が「地獄の沙汰も金次第」と、お札を棺に入れてしまうケースもありますが、笑い話では済まされないリスクもあるのでご注意を。
副葬品の選び方は、故人のためを思えばこそ。 でもその一方で、「火葬」という工程に沿った配慮も大切です。 送りたい気持ちを、正しくかたちにするために── 知っておきたい“副葬のリアル”でした。
次回は、「笑って送る」ことの意味とグリーフケアの視点について、お話しします。
それでは、また次回。