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ご遺体のお医者さん

2019.10.4 コラム

腐敗遺体に死化粧はできるの?

こんにちは、遺体感染管理士のエンゼル佐藤です。
腐敗してしまったら、もう化粧も何もできないの?

そうでもないんです。
私が請け負った仕事で、死後4日の方を見れらる様にしたケースがありました。

死後4日、でも顔色は綺麗に治った

私にその方の依頼の連絡が入ったのは、ご遺体が死後2日経過した状態でした。
警察での検死が終わり葬儀社にさげたのが二日後。
計4日が経過していました。

孤独死案件で、警察での検案が入ったケースでした。
60代の男性で、アパートに独り暮らし。
暖房の効いた部屋で発見され腐敗が進行状態で、身体には腐敗の水泡が出来始めている状態でした。


奥さんを先に亡くし、お子さんは死後の関係で別に住んでいました。
死因は心筋梗塞による発作と、死亡検案には記載されていました。
倒れた際に、額をぶつけて傷ができそこから少し出血していました。
色も赤黒く変色し、痛々しい色です。

臭いもかなりキツイ状態で、まずは消臭が先に思われました。
連絡してきた葬儀社の社長からは
『見られる様にして欲しいって言ってるんだけど』

身体は水泡だらけでしたが、顔は比較的に綺麗な様子。
『一度だけなら色も入れられるでしょうね、お直しは無理ですけど』
そう答えました。

ハンドアプライ(手で色を入れる方法)も、一度なら皮膚が耐えられると判断しました。
時間の経過で腐敗が進むと、皮膚が剥けてしまい手に負えなくなります。
やり直しの効かない、一発勝負です。
色を入れるタイミングと入れる色の判断が決めてになります。

しかし、できるとは言えお金が掛かる話です。

『できますけど、通常料金では無理ですよ?別途料金ですね』
『え?そうなの?安くできるって言っちゃったんだけど、、、、』

これが、私が葬儀社からの下請けをしなくなった理由の一つです。
葬儀料金も安いプランでの家族葬。
しかし、仏さんを見れないのは困る。
そこでメイク屋に外注。

その外注料金を元受けの葬儀社が勝手に決めるケースが多いのです。

自分のところの料金が安いプランだろうと、こっちの価格は別問題なんですがね。
なぜ、勝手に安い基本金額を相手に伝える?
このケースも、これがトラブルの引き金になりました。

治せるけど、値切られて結果ボロボロ

結論からいいますが、ご遺体は見られる様に綺麗にお治ししました。
暗赤色な凄い顔色で、まるで『赤鬼』みたいな顔でしたが、
綺麗に生前の顔色に戻しました。

額の傷も修復して無かったみたいに消して、穏やかな顔になりました。

『すげー!まるでハリウッドの特殊メイクみたいじゃん!』
いや、そりゃそうなんですけど。
習った師匠はそのハリウッドの特殊メイクを習った人だし・・・

しかし、料金の問題で施主さんとの話し合いは難航していました。

腐敗が酷く、普通のお化粧の仕方が出来ない旨や色々と後のケアが必要な件もお伝えしました。

が、最初に葬儀屋が言った
『三万円くらいでできる』
の言葉が施主さんの脳みそにインプットされてしまい、事後の変更ができない状態になっていました。

『その金額はあくまで基本のお化粧の料金なんですよ。この方は通常のやり方では無理なんです。お化粧だけでは済まないし』
『じゃあ、いくらでできるの?』
『安く見積もっても20万は掛かる計算ですけど』
『そんなに払えないよ!何とかなんないの?』

問答している時間が惜しい。
早く処置をしないと、ますます難しくなるのに、、、、

こちらの説明や言葉が足りなかったのもあったかも知れません。
しかし、こちらもこれが仕事だしボランティアではありません。

正直、20万の金額でも経費を引くと利益は厳しいのです。
(計算すると、私の収入は2万円にならない)

『じゃあ、家族でファンデーションでも塗るよ』
『そうできるなら、お勧めします。しかし、もう皮膚が腐敗してボロボロで剥けてしまいますよ?』

薄くなった皮膚は、まるで熟した『桃』の皮みたいな状態。
スポンジで擦れば、ずるずるに剥けてしまう。

お金が無いのは分かるが、ごり押しはこちらも困る。

結果は、5万円で今の顔色を肌色にする事に決まった。
しかし、アフターケアやお直しは一切無し。
今、この現状を治す事だけにした。

ご遺体の顔色は毎日変わる

施主さんの希望で、遺影の写真に近い顔色にしてみた。
『スゲー!まるで元気にゴルフしてた頃みたいだ!』

しかし、この顔色は今だけでしかない。
その説明もした。

明日にはまた、顔色が変わってしまう事が想定される。
おそらく、腐敗が止まらずに真っ黒になると思われた。
安い葬儀プランでドライアイスの量が足りていない。

通常ならば、色を入れるのはお通夜の午前中あたりが望ましい。

ご遺体はデリケートで、ましてや腐敗遺体は冷却を合わせても変化が止まらない事が多い。
だから、当社は必ずアフターケアを入れる様にしている。

しかし、その金額さえ却下された。
『今日だけでいいんだ、明日なんて構わない』
『明日にはお色が変わってしまいますよ?』
『いいから、ここまで帰っていいよ』

そう言って、現金を寄こしてきた。
そこまで言われると、こちらも無理は言えない。

多分、遺族はこのままで大丈夫だと思っていたのだろう。

翌日、葬儀担当に連絡すると
『佐藤さん、仏さんが真っ黒なんだよ!』
『いや、そうなるって施主さんには話したんだけどね』
『こりゃ、クレームもんだなぁ、、、』
『そもそも、こっちの料金を勝手に安く言うから問題なんだけど?』

お治し代は更に高く付く。

もちろん、払っていただけるならリカバリーは可能なのだ。
私はそこまで計算をしている。
触らなくてもメイクをする方法はあるからだ。

安物買いの銭失い

そんな昔のことわざがある。
誰でも経験はあると思う。

それでも、値切ってはいけないモノもある。

取り返しの効かない後悔はある。
身内のお別れの時間や体験はそうだと思う。

お金は稼げば戻ってくるけど、時間と体験は取り返しが効かないでしょう?

棺や祭壇のお花はランクを下げてもいいけど、技術費は削ってはいけないね。